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病院の赤字はなぜ起こる?6割超が赤字の実態と黒字化への対策

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病院の赤字はなぜ起こる?6割超が赤字の実態と黒字化への対策

赤字の状態でいつまで持つのか。そう感じている病院関係者の方は少ないのではないでしょうか同じ不安は、その病院で働く医師や、「病院の7割が赤字」というニュースを見た地域の住民にまで広がっています。

ある調査では民間の病院の6割以上が、全国自治体病院協議会の調査では自治体病院の8割以上が赤字という結果示されました。

本記事では、病院が赤字になりやすい構造的な原因と、「赤字でも病院がすぐには潰れない」と言われている理由、そして病院経営者・事務長が実際に取り組める黒字化の対策までを順に解説します。

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病院赤字は人件費高騰・診療報酬改定・稼働率低下など5つの構造要因で起こる

病院の赤字の原因には、外部環境の変化による要因と、経営指標の把握不足や戦略の欠如といった内部要因の両方があります。

外部要因として代表的なのが、人件費・物価の高騰、診療報酬改定、病床稼働率の低下、医師の働き方改革によるコスト増、そして医療従事者そのものの人員不足の5つです。少子高齢化による労働人口の減少と地方の医師偏在が重なり、人件費の増減とは別の軸で人材確保そのものが難しくなっている点も、赤字の背景として無視できません。順に見ていきます。

人件費・物価高騰が最大の圧迫要因になっている

病院の支出でもっとも大きな割合を占めるのが人件費です。その人件費は、2024年度から始まった医師の時間外労働規制への対応や人材獲得競争の激化によって上昇し続けていると指摘されています。ここに電気代などのエネルギー価格や医薬品・医療材料費の高騰も重なり、支出面を圧迫しています。

医薬品などの材料費や、給食・清掃などの委託費と比べても人件費の比重は大きく、コストの中でも人件費の管理が特に重要な項目になっています。

収入の柱である診療報酬は国が定める公定価格で、病院側の判断で価格を変えられません。加えて、コロナ禍で交付されていた補助金が縮小したことで、これまで見えにくかった病院の赤字体質が表面化しました。

診療報酬改定と病床稼働率の低下が収益を細らせる

診療報酬の改定も、病院経営を左右する大きな要因の一つです。国の医療費抑制策により、これまで診療報酬は全体として引き下げ・据え置き傾向で推移する年が続き、個々の診療点数の引き下げや算定要件の厳格化が重なる年は、従来と同じ診療を続けていても収入が減ってしまいます(令和8年度改定の内容は後述します)。

もう一つの圧迫要因が病床稼働率の低下です。入院病棟を持つ病院では、入院診療による収益が経営の中心を占めます。病床稼働率が低下すれば、本来得られるはずの入院収益が得られず、赤字化する可能性があります。

厚生労働省の病院報告(令和6年医療施設(動態)調査・病院報告の概況)によると、病院の1日平均外来患者数は令和6年(2024年)で1,212,243人となり、令和5年(2023年)の1,233,703人から1.7%減少しました。厚生労働省の病院報告(令和7年9月分概数)でも、令和7年9月時点の月末病床利用率は病院総数で76.9%にとどまっており、外来・入院の両面で収益基盤が細っている実態が伺えます。

医師の働き方改革が人件費をさらに押し上げる

2024年度から本格化した「医師の働き方改革」も、病院経営が直面する課題の一つとされています。医師の労働時間規制を守るためには追加の人員確保が欠かせず、その分だけ人件費が押し上げられるためです。

働き方改革はもともと医師の過重労働を是正する政策ですが、結果として病院側のコスト構造に跳ね返ってきています。当直・オンコール体制を労働時間規制に合わせて見直すほど、必要な医師数と人件費は増えやすくなります。働き方改革は、診療報酬改定と並ぶ制度環境の一部として、前述の人件費高騰を政策面から押し上げる一因となっています。

病院の赤字はどれくらい深刻か|民間6割・自治体8割超が赤字

ここまで見た5つの要因が、実際にどれだけの病院を赤字に追い込んでいるのかを、対象母集団の異なる複数の一次統計で確認してみましょう。数字だけを比べるのではなく、それぞれの調査が何を対象にしているかを区別することが実態把握の前提になります。

民間病院の6割、自治体病院の8割以上が赤字という現実

四病院団体協議会(日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本病院会・全日本病院協会で構成)が2025年11月に公表した「2025年度病院経営定期調査」結果報告書(有効回答1,629病院)によると、医業利益が赤字の病院は2023年度の70.8%から2024年度は74.6%へ拡大し、経常利益でも赤字の病院が52.1%から65.0%へ急増しています。

自治体病院はさらに深刻です。全国自治体病院協議会が2025年8月に公表した2024年度決算報告によると、自治体病院の86%(562病院)が経常赤字となっていました。同協議会の決算概要説明資料では、医業赤字の病院は95%にのぼります。

第25回医療経済実態調査(令和7年11月公表、中央社会保険医療協議会)は、四病協・全自病それぞれの個別統計を裏付ける全体像として、一般病院全体の損益差額(前年度構成比率)がマイナス7.3%であることを示しています。割合ではなく金額で見ると、一般病院全体(732施設・平均171床)の1施設当たり年間損益差額は約マイナス2億6,700万円でした。規模の異なる病院を含む単純平均であり、個別病院の赤字額ではありません(補助金等を含む総損益差額は約マイナス1億4,200万円です)。

公立病院の赤字が大きく見えるのは税金補填の仕組みが違うから

開設者別に見ると、赤字の程度は大きく異なります。第25回医療経済実態調査の「一般病院(集計1)」開設者別表では、損益差額(前年度構成比率)が医療法人マイナス1.0%・国立病院マイナス5.4%・公的病院マイナス4.1%・公立病院マイナス18.5%となっている点が特徴的です(先ほど示した全体マイナス7.3%は、同じ表の「全体」列にあたります)。

なぜ公立病院だけ突出して赤字幅が大きく見えるのでしょうか。理由は、税金による補填の仕組みが民間の病院と違うためです。公立病院は独立採算が原則の地方公営企業でありながら、救急・小児・僻地医療のような不採算部門を制度的に担当しており、その分を自治体の一般会計からの繰入金でまかなう仕組みが特徴的です。民間の医療法人は主に自院の診療報酬収入で経営しますが、公立病院は最初から税金による下支えを会計構造に組み込んでいます。そのため、単純な損益差額の比較では公立側が不利になります。

「7割が赤字」報道の数字は、調査対象の違いによるもの

「病院の7割が赤字」という数字が独り歩きしていますが、実際の赤字割合は調査対象によって幅があります。四病協の調査では医業赤字が74.6%、全自病の調査では自治体病院の経常赤字が86%です。2つの数字が異なるのは、対象とする病院の集団が違うことに加え、医業赤字と経常赤字という基準そのものが異なるためです。一般病院全体の平均像としては、第25回医療経済実態調査が示す損益差額マイナス7.3%を基準に見るのが妥当です。

母集団の違いは種別でも生じ、全国自治体病院協議会の2024年度決算報告では精神科病院(33施設)の経常赤字割合は64%で、病床規模別の区分のうち最も高い300床以上400床未満の96%より低い水準です。

赤字病院が多数を占める傾向は近年に限りません。厚生労働省が実施した平成11年度の調査でも赤字割合は70.3%でした。年次が違っても、赤字病院が多数を占める構造は続いています。

赤字でも病院が「潰れない」と言われてきた仕組みは、今は変わりつつある

病院の経営は赤字なのに、なぜ潰れないのか。この疑問を持つ人は少なくありません。この疑問に答えるには、赤字でも病院が運営を続けてこられた仕組みを理解する必要があります。

医療機関の倒産は、実際には増加傾向にあります。東京商工リサーチの調査では、2026年上半期(1〜6月)に倒産した医療機関は38件(前年同期比15.1%増)となり、2006年以降の上半期では2009年の39件に次ぐ2番目の高水準でした。倒産原因を種類別に見ると、最も多いのは「販売不振(収益減)」の22件(構成比57.8%)です。「赤字でも病院は潰れない」という従来の認識は、少なくとも一部の医療機関にとっては既に過去のものになりつつあります。

補助金と診療報酬が支えてきた「潰れない」仕組み

「潰れない」という認識を支えてきたのは、主に2つの制度的な仕組みです。

1つ目は診療報酬です。診療報酬は全国一律の公定価格として、患者数に応じた収入を制度として保証してきました。個々の病院は価格競争に晒されることがなく、一方で収入の見通しを立てやすく、経営が安定していました(この前提が診療報酬改定や物価・人件費の高騰で崩れつつあることは、前の章で述べたとおりです)。

2つ目は運営費補助金です。補助金の会計上の扱いは会計基準によって異なります。病院会計準則では運営費補助金が医業外収益に計上されるため、医業利益では赤字でも、補助金を含めた経常利益では黒字を保っている病院は少なくありません。この会計上の仕組みが、公立・公的病院を中心に、赤字でも運営を継続できてきた理由の一つです。

医療機関の倒産38件は2009年に次ぐ高水準、前年同期比15.1%増

東京商工リサーチの調査によると、2026年上半期の医療機関(病院・クリニック・歯科医院)の倒産は38件で、前年同期比15.1%増と大幅に増加しました。上半期の件数としては、2006年以降の20年間で、2024年・2025年の33件を上回り、2009年の39件に次ぐ2番目の高水準です。

業態別では、20床以上の入院設備を持つ「病院」は4件(前年同期8件)と半減した一方、「クリニック」は19件(同13件)、「歯科医院」は15件(同12件)と、いずれも前年同期を上回りました。倒産原因では「販売不振」の22件(構成比57.8%)が最多で、「既往のシワ寄せ」の8件(同21.0%)と合わせて約8割を占めます。医療機関全体として倒産の件数が増えつつあり、「赤字でも潰れない」という前提が業界全体として揺らぎつつあることが伺えます。

自治体病院は決算・議会資料、医療法人は都道府県への届出書類で分かる

病院の経営情報は、開設主体によって公開される場所が異なります。自治体病院であれば、議会に提出される決算報告や予算資料として経営状況が公開されます。医療法人であれば、都道府県への届出書類(決算届等)として経営情報を確認できる仕組みがあります。自院や気になる病院がどちらに該当するかによって、確認先を使い分けてください。

病院経営を黒字化する改善策|収益・コスト・体制の3方向

ここまで見てきた赤字の構造要因を踏まえ、黒字化に向けた改善策を、収益改善・コスト適正化・体制強化の3つの方向で整理します。併せて、経営赤字の相談先を状況別に紹介します。

経営の改善余地を洗い出したい段階なら外部の医業経営コンサルタント、統合・再編まで視野に入れて検討する局面ならM&Aアドバイザー、経営状況を業界水準と比べたいのであれば前章で紹介した信用調査会社のレポートが参考になります。相談先は、自院がどの段階にあるかによって使い分けることが大切です。

自院の赤字は先ず収益・費用・効率の3軸で切り分ける

経営者・事務長が先ず着手すべきは、自院の赤字の主因を「収益」「費用」「効率」の3つの軸で切り分けることです。どこに問題があるのかを特定しないまま対策を打っても効果は出にくいです。

加えて、自己資本比率・流動比率・借入金比率といった財務の安全性指標も、3つの軸を補完するチェック項目になります。これらは資金繰りや債務返済能力を評価する指標で、赤字の深刻度を測る上で参考になります。

収益は診療報酬加算の計上漏れ防止と患者単価・患者数増で底上げする

収益改善の基本は、診療報酬加算を漏れなく計上することです。診療報酬改定の度に新設される加算項目は多く、賃上げやDX化に取り組んだ際は、その実績を漏れなく計上すれば、その分だけ収入が増えます。

また、診療報酬算定の工夫による患者単価の向上や、来院者満足度を高めることによる患者数の増加も、収益改善の柱となります。単価と患者数、両面からの収益基盤の底上げが求められます。

コストは人件費の適正化とDX・ITシステム導入による業務効率化で抑える

「人件費の適正化」と「DX・ITシステムの導入による業務効率化」によってコストの適正化を図ることができます。人手不足が深刻化する医療現場では、デジタル技術を活用することで、少ない人手でも生産性を上げつつ業務を効率化することが可能です。

業務のIT化により、限られた人員で従来と同じ、あるいはそれ以上の業務量をこなすことが可能になります。

地域連携とM&Aによる統合で経営基盤を強くする

同地域の医療機関との連携や、M&Aによる経営統合も、経営基盤を強化する選択肢の一つです。単独での経営改善に限界がある場合、地域医療の中で経営資源や収益基盤を再編することも必要になります。

病院で働く医師への影響|給与は診療報酬の賃上げ要件次第、医師確保は難しくなる

病院の赤字は、そこで働く医師にとっても他人事ではありません。「多くの病院が赤字であるなら、医療職の給与も上がらないのでは」という不安の声も出てきています。ここでは、医師の給与に関わる制度上の仕組みと、医師確保をめぐる構造的な変化を、公表データが豊富な医師について中心に整理していきます。

国は賃上げ実績の報告を求め、賃上げの実効性を確保する仕組みをつくっている

中央社会保険医療協議会 総会(第639回)「診療報酬改定について」(令和7年12月26日)によると、令和8年度診療報酬改定では、令和8年度・令和9年度それぞれで職員給与を+3.2%分(看護補助者・事務職員はそれぞれ5.7%)引き上げる目標水準を実現するための支援措置が講じられます。この3.2%は職員個々の賃上げ目標率であり、後述する診療報酬改定率+3.09%のうち賃上げ原資に充てられる+1.70%分(改定率全体に占める内訳の割合)とは異なる指標です。

併せて、令和6年度改定で入院基本料等により賃上げ原資が分配された職種についても、実際に支給される給与(賞与を含む)に係る賃上げ措置の実効性が確保される仕組みが構築され、賃上げ実績の把握・検証が行われています。

医師のキャリアが多様化し、地方での医師確保が難しくなっている

医師のキャリアは、かつての大学から医局、関連病院を経て開業に至るという一本道のモデルから変化しつつあります。医師個人のキャリアの選択肢が広がる一方、地域に根ざした病院、特に地方や中山間地域の病院では、医師の確保が年々難しくなっています。都市部の病院には応募があっても、地方の病院では募集をかけても医師が集まらないというケースが目立ってきています。

勤務先や気になる病院の閉院リスクは稼働率・診療科構成・補助金依存度で見極める

自分の勤務先や、近隣の気になる病院が閉院・倒産するリスクを、どの様に見極めればよいのか。ここでは、前章で紹介した業界全体のデータの探し方とは異なり、個別の病院についてリスクを見極める方法を紹介します。

医療機関の倒産は増加傾向にある

前の章で示したとおり、医療機関の倒産件数そのものは増加傾向にあります。赤字に加えて、後継者不在や事業承継の失敗も、閉院・倒産の一因になっています。

経営悪化のサインは病床利用率の低下・急性期比率の高さ・補助金依存

全国自治体病院協議会の2024年度決算報告では、感染症指定医療機関94%、へき地医療拠点病院90%、災害拠点病院94%、不採算地区中核病院92%、救命救急センター93%が経常赤字となっており、高機能な急性期病院ほど赤字割合が高い傾向が伺えます。自分の勤務先や気になる病院について、次の3点を確認してみてください。


* 病床利用率・稼働率が前年より明確に低下していないか。
* 急性期・救急など高機能な診療科の比率が高くないか(統計上、これらは赤字割合が高い傾向にあります)。
* 補助金・交付金への依存度が高くないか(本業=医業収支だけで見て黒字かどうかを確認します)。

地域医療構想による病床再編と診療報酬改定で、今後の病院経営はさらに厳しくなる

今後の病院経営に影響する政策要因として、地域医療構想による病床再編と、令和8年度診療報酬改定の2つを整理します。医師の働き方改革によるコスト増は前の章で既に述べたため、ここでは触れません。

地域医療構想とは、都道府県主体の病床再編政策

地域医療構想とは、都道府県が主体となって、将来の医療需要に合わせて病床機能を再編する政策です。人口減少や高齢化による医療需要の構造変化を背景に、病院の統合・再編が今後も進むと見込まれています。

令和8年度診療報酬改定は+3.09%、新たな余力は限定的

中央社会保険医療協議会 総会(第639回)「診療報酬改定について」(令和7年12月26日)によると、令和8年度診療報酬改定の改定率は+3.09%です。ただし、これは令和8年度+2.41%・令和9年度+3.77%の2年度平均であり、単年の改定率ではありません。

内訳を見ると、賃上げ分+1.70%が過半数を占めており、使途があらかじめ決まっている部分が大きいため、病院が自由に使える余力は限定的です。併せて、全国自治体病院協議会は、医療材料や医療機器・保守委託費に係る消費税負担の増大を踏まえ、控除対象外消費税問題の見直しを国に要望しており、診療報酬以外に税制も収支を左右する論点になっています。

よくある質問|赤字の理由・潰れる前兆・すぐ潰れない理由に答える

Q、病院経営が難しいとされるのは何故ですか?
人件費・物価の高騰、診療報酬改定、病床稼働率の低下、医師の働き方改革によるコスト増、医療従事者の人員不足という5つの構造要因が重なっているためです。詳細は本記事前半で解説しています(人員不足については、少子高齢化と地方の医師偏在という背景を参照してください)。

Q、病院が潰れる前兆はどの様に見極めればよいですか?
病床利用率の低下、急性期など高機能な診療科の比率の高さ、補助金・交付金への依存度の高さが、経営悪化のサインです。倒産件数自体も増加傾向にあります。

Q、赤字でも病院がすぐには潰れないのはなぜですか?
診療報酬という公定価格制度と、運営費補助金の会計上の扱いという2つの仕組みが、赤字でも運営を継続できる基盤になってきたためです。ただし、この前提は近年の倒産件数の増加傾向を見るかぎり、変わりつつあります。

※掲載内容はすべて記事公開時点のものです。

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