歯科医院のファクタリングとは、入金待ちになっている「診療報酬(保険請求分)」をファクタリング会社に買い取ってもらい、本来の入金日よりも前に現金化する資金調達の方法です。対象になるのは保険診療分だけで、自費診療の売上は含まれません。
また、「掛け目」という仕組みがあるため、請求した金額のすべてが最初に手元に入るわけではありません。実際にいくら準備できるかは、毎月の保険請求の金額がベースになります。
この記事では、歯科医院ならではの注意点や手元に入る金額の計算方法、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
歯科ファクタリングと?保険診療分の入金を前倒しで受ける仕組み
歯科医院が請求する診療報酬(保険診療分)は、本来の入金日より前にファクタリング会社に買い取ってもらうことができます。入金を前倒しで受け取れるため、材料費や人件費などの支払いを、入金日を待たずにスムーズに行えるようになります。
銀行の融資(借入)とは異なり、「権利を売る」という取引です。そのため、借入金のように毎月分割で返済していく必要はありません。 このやり取りの相手は患者さんではなく、社保(社会保険診療報酬支払基金)や国保(国民健康保険団体連合会)といった公的機関です。「歯科医院」「ファクタリング会社」「社保・国保」の3者間で取引が進みます。
患者さんから直接取り立てるようなものではないため、院での日常の診療や患者さんとの関係、窓口での支払いに影響が出ることは一切ありません。
買取の対象になるのは保険診療分だけで、自費の売上は入らない
買い取りの対象になるのは、社保や国保に請求する保険診療分(歯科診療報酬)だけです。自費診療の売上は、審査で経営の安定性を判断する材料にはなりますが、買取りそのものの対象には含まれません。
インプラントや矯正治療などの自費診療や、患者さんが窓口で支払う一部負担金は買い取り対象外です。
ファクタリングで資金化できるのは、あくまで公的機関へ請求する分のみとなります。そのため、自院の売上全体のうち保険診療がどれくらいを占めているかがポイントになります。
入金は通常の入金サイクルより前倒しできる
保険請求を行っても、その月の中にすぐお金が入ってくるわけではありません。診療を行ってから実際の入金までは、通常約2ヶ月かかります。 ファクタリングを活用すると、この約2ヶ月の待ち時間を短縮し、入金を1〜1.5ヶ月ほど前倒しできます。
技工料や材料費、スタッフの給与などは、保険金の入金よりも先に支払日がやってきます。入金を前倒しできれば、手元の自己資金からいくら立て替えるかを調整しやすくなり、資金繰りにゆとりが生まれます。
自院がいくら資金化できるかは、月次の保険請求額で決まる
総売上が同じ医院であっても、調達できる金額が同じとは限りません。買い取りの対象が保険診療分に限られるため、売上全体ではなく「保険請求の規模」で上限が決まるからです。
一般的な審査では、月々のレセプト(保険請求)金額をベースに買取上限額が決定されます。
そのため、自費診療の割合が高い医院ほど、同じ総売上であっても保険請求額が少なくなリ、ファクタリングで準備できる金額も小さくなります。 自院の割合は、毎月の「自費売上」と「総売上」を比較すれば簡単に把握できます。他の医院の平均と比べる必要はなく、自院の直近の実績を確認すれば十分です。 ただし、保険請求した金額がそのまま全て手元に入るわけではありません。「掛け目」という留保金の仕組みがあるため、実際の手取り額は請求額より少なくなります。
掛け目の詳しい仕組みは次の章で説明します。概算を出したい時は、まず保険請求額を確認し、そこに買取比率を掛けて計算してください。
自院の数字で上限を出す手順
自院で調達できるおおよその上限額は、次の3ステップで試算できます。
- 直近の月間保険請求額(レセプト金額)を確認する
- 対象とする月数を掛ける(※何ヶ月分を対象にできるかは事業者の条件によります)
- 買取比率(掛け目)を掛ける(※通常8〜9割程度。ここからさらに手数料が引かれた額が最初に振り込まれます)
ちなみに②の目安としては、月間保険請求額の1〜2ヶ月分程度が一般的な条件となります。 設定できる月数はファクタリング会社によって異なり、この計算はあくまで目安です。 最終的な金額は実際の審査で決まりますが、事前におおよその目安を把握しておけば、提案された条件が妥当かどうかを判断しやすくなります。
満額は手元に入らない?「掛け目」で決まる最初の手取り額
ファクタリングで最初に買い取ってもらえるのは、請求額の一部です。
この買取りの割合を「掛け目」と呼びます。掛け目とは診療報酬の額面に対する買取比率のことで、通常は85%前後(8〜9割)に設定されます。 なぜ全額ではなく掛け目が設定されるかというと、レセプトの査定(減額)リスクに備えるためです。審査の段階で請求内容が一部減額される可能性があるため、あらかじめ一部を保証金のように残しておく仕組みになっています。
残しておいた分は減額リスクへの備えなので、特に減額がなければ後から返還されます。そのため、医院側がその分損をするわけではありません。 ただし、この精算分が入ってくるのは審査が確定した後です。契約した直後にすぐ使える資金は、満額ではなく「買取分(最初の振込額)」だけになる点に注意が必要です。
資金計画を立てる際は、請求額の満額ではなく「買取り分から手数料を引いた初回入金額」を基準に計算しましょう。
歯科医院がファクタリングを使う3つのメリット
歯科医院がファクタリングを活用する主なメリットは以下の3点です。
① 借入ではないため毎月の返済がない
借金ではないので、毎月コツコツ返す必要はありません。似たような資金調達に「診療報酬担保ローン」がありますが、あちらは「融資」なので毎月の分割返済が必要です。
ファクタリングは債権の売却なので返済義務がなく、資金繰りの柔軟性を保ちやすいのが大きな違いです。
② 入金を前倒しできる
通常の入金サイクルよりも1〜1.5ヶ月早く現金化できます。支払いが先行する時期の資金不足をカバーするのに役立ちます。
③ 赤字決算でも利用できる場合がある
審査で重視されるのは売掛先(社保・国保)の信用度です。そのため、自院の決算内容だけで断られるとは限りません。
また、貸借対照表上で「負債(借入金)」にならないため、オフバランス化(負債を増やさない)ができるメリットもあります。
ただし、負債に載らないことが金融機関からの評価にどう影響するかは取引銀行によって異なります。
歯科医院がファクタリングを使う4つのデメリット
一方で、注意しておくべきデメリットは以下の4点です。
① 自費診療の売上は対象外
買取り対象は保険診療のみです。自費診療の割合が高い医院ほど、売上規模に対して調達できる金額が小さくなります。
② 「掛け目」により一度に得られる額が制限される
掛け目があることで、請求額の満額を一度に調達できるわけではありません。最初に入る金額は限られる点に留意しましょう。
③ 使い続けると手数料の負担が重くなる
利用が長期化して手数料の支払いが常態化すると、かえって経営を圧迫するリスクがあります。ファクタリングはあくまで一時的な資金調達手段と考え、長期的・日常的な利用は避けるのが基本です。
④ 利用をやめた月に「入金ゼロ」の期間が発生する
先の入金を前倒しで受け取るため、ファクタリングを終了した月は、本来入るはずだった診療報酬の入金がなくなります。
そのため、使い始める段階で「いつ利用をやめるか」「やめた月をどう乗り切るか」の計画を立てておくことが不可欠です。入金がない月を自院の蓄えでカバーできるか、事前に試算しておきましょう。
まとめ|申し込む前に院長先生が確認しておきたい3つのポイント
ファクタリングを検討する際は、まず自院の数字をもとに以下の3点を確認しましょう。
- 買取り対象は保険診療のみ(調達額のベースは総売上ではなく毎月のレセプト金額)
- 最初に手元に入るのは「掛け目」と「手数料」を引いた金額(残りの分は減額がなければ後日精算)
- 利用を終了する月には入金がストップする(止め時と出口戦略を決めてから利用を開始する)
他院の相場ではなく、自院のレセプト請求額と資金繰りの実情に合わせて判断することが大切です。まずは直近の月間保険請求額をもとに、手元にいくら準備できるかを計算してみることから始めてみてください。
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