「介護報酬の入金が遅くて資金繰りが厳しい」「銀行融資以外の資金調達方法を探している」という介護事業所の経営者は少なくありません。そこで注目されているのが、介護報酬債権を早期に現金化できる「介護ファクタリング」です。
介護ファクタリングは融資ではなく債権の売却なので負債にならず、担保や保証人も不要で、最短即日〜数日というスピードで資金調達ができる方法です。ただし手数料や利用条件など、事前に知っておくべき注意点もあります。
本記事では、介護ファクタリングの仕組みから手数料相場・メリット・デメリットなど網羅的に解説します。
介護ファクタリングとは?
介護ファクタリングとは、国保連からの入金を待たずに介護報酬債権を現金化できる資金調達方法です。
- 介護報酬債権を早期に現金化する資金調達方法
- 融資ではなく「債権売却」なので負債にならない
- 最短即日〜数日というスピード資金調達が可能
融資とは異なる仕組みで、スピーディーかつ柔軟に資金を確保できます。
介護報酬債権を早期に現金化する資金調達方法
介護ファクタリングは、国保連(国民健康保険団体連合会)から受け取る予定の介護報酬債権を、ファクタリング会社に買い取ってもらう仕組みです。介護ファクタリングを選択する介護事業所が増えている背景には、国保連から報酬を受け取るまでの時間が関係しています。
なぜなら、介護事業所は当月提供したサービス分を翌月10日までに請求しますが、実際に報酬が支払われるのは約2か月後となるためです。サービス提供から約2ヶ月遅れて入金されるため、その間の人件費や電気代等にかかる費用を補うための資金繰りに悩む事業者が多くいます。
なお、「介護報酬早期資金化サービス」や「介護報酬債権ファクタリング」といった名称でも呼ばれています。
融資ではなく「債権売却」なので負債にならない
銀行融資は「借入金」として負債に計上されますが、ファクタリングは資産の部にある「売掛金(介護報酬債権)」が「現金」に振り替わるだけの会計処理です。負債に計上されず決算書に影響を与えないため、銀行からの融資を受けたい際にもスムーズに話が進みやすくなります。
銀行借入のように毎月返済する必要がなく、手数料もファクタリング実行時に差し引いた金額が入金されるため、別途の返済も発生しません。
最短即日〜数日というスピード資金調達が可能
サービスによっては、国保連への請求から約5営業日でスピード入金が可能です。銀行融資の場合、申し込みから実際に資金が振り込まれるまで数週間から1ヶ月以上かかることも珍しくありませんが、介護ファクタリングであればその期間を大幅に短縮できます。
また、担保の用意も不要なため、資金調達時の審査や手続きにおける障害が少なく、急な資金需要が発生した際にもスピーディーに対応できる点が大きな魅力です。
介護報酬ではなく介護ファクタリングが選ばれる理由
なぜ介護報酬の入金を待たず、あえてファクタリングを利用する事業所が増えているのでしょうか。
- 介護報酬は入金まで約2ヶ月かかる
- 入金までのタイムラグが資金繰りを圧迫する
- 銀行融資に頼れないケースでも利用しやすい
その背景には、介護業界特有の入金サイクルと資金繰りの課題があります。
介護報酬は入金まで約2ヶ月かかる
介護事業所の売上は、40歳以上の被保険者から徴収された介護保険料を財源に国保連から支払われます。しかし、この制度上の仕組みにより、実際の入金までにはタイムラグが生じます。この構造は制度上決まっているものです。介護事業所側の努力で短縮できるものではないため、資金繰りを考えるうえで前提として理解しておく必要があります。
なお、ファクタリング会社によっては、初回は介護報酬を2ヶ月分受け取れます。まとまった現金の調達により、資金繰りの改善が見込めるでしょう。
入金までのタイムラグが資金繰りを圧迫する
利用者の収入・資産により負担割合は変動する場合がありますが、介護事業所の収入は利用者が負担する1割と、国保連から支払われる介護報酬9割で構成されています。
介護報酬が入金されるまで時間がかかる一方、人件費や家賃、消耗品費、仕入れなどの支出は毎月発生します。このタイムラグにより、開業して間もない時期はとくに、十分な資金を工面できないケースが生まれやすいです。利用者数の伸びが思うようにいかないと運転資金が底をつき、事業継続が難しくなるおそれもあります。
銀行融資に頼れないケースでも利用しやすい
銀行融資は、事業者自体の返済能力や財務状況、開業からの実績年数などが重視されるため、創業間もない事業所や赤字決算の事業所は審査に通りにくい傾向があります。一方、介護報酬の売掛先は国保連や社保などの公的機関であり、支払いの確実性が高い特徴があります。
そのため、介護ファクタリングは、事業者自体の開業年数や財務状況にかかわらず利用できる可能性が高く、銀行融資の審査が通りにくいケースでも資金調達の選択肢になり得ます。
【表で解説】介護ファクタリングは2種類
介護ファクタリングには、大きく分けて「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。
| 比較項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 手数料 | やや高め | 比較的低い |
| 資金調達にかかる時間 | 短い(最短即日~数日) | 長い(5日~2週間程度) |
| 国保連への通知 | なし | あり |
| メリット | スピーディー・秘匿性が高い | 手数料が安い |
| デメリット | 手数料が高い | 国保連の同意・手続きに時間がかかる |
2社間は事業所とファクタリング会社のみで契約が完結し、国保連への通知が不要でスピーディーですが、手数料はやや高めです。3社間は国保連を含めた3社間で契約するため、手数料は抑えられますが、資金調達までに時間がかかります。どちらにもメリットとデメリットが存在するため、事業所の状況に応じて選びましょう。
介護ファクタリングの利用の流れ
実際に介護ファクタリングを利用する場合、どのようなステップを踏むのでしょうか。ここでは申し込みから入金までの流れを解説します。
- 相談および申し込み
- 必要書類を提出する
- 審査
- 契約ののち入金
1.相談および申し込み
まずは介護ファクタリングを依頼できる企業を探し、相談します。手数料や条件は会社によって異なるため、複数社へ相談し見積りの比較が望ましいでしょう。
2.必要書類を提出する
申し込み後は必要書類を提出します。一般的に必要とされる書類は、以下の通りです。
- 登記簿謄本
- 決算書(3期分)
- 請求書
- 支払決定通知書
- 通帳の明細
- 履歴事項全部証明書
- 印鑑証明書
- 事業所番号の記載がある許認可証のコピー
なお、会社によって必要書類が異なる場合もあるため、相談時に確認しておきましょう。 カイポケ早期入金では 決算書は不要 であるため、手続き負担を比較的抑えてご利用が可能です。
3.審査
書類提出後は、ファクタリング会社による審査が行われます。ここで重視されるのは、事業所自体の信用力ではなく、国保連への請求内容と実際の介護報酬債権が一致しているかどうかです。提出書類に不備がなく、請求内容と債権額に矛盾がなければ、比較的スムーズに審査が進みます。
4.契約ののち入金
ファクタリング会社により異なるものの、契約が締結されれば、最短翌日〜2週間程度で指定の口座に入金されます。契約後の入金は、前払いと精算払いの2回にわかれるのが一般的です。
前払いでは介護報酬債権の80%程度が入金されます。これは、国保連への請求が返戻などにより全額支払いが認められるとは限らないためです。残りの約20%は、介護報酬債権が国保連から実際に支払われた後に精算され、入金される仕組みになっています。
介護ファクタリングのメリット
介護ファクタリングには、融資にはない独自のメリットがあります。
- 国保連が支払元のため手数料が比較的抑えられる
- 担保・保証人が不要で手続きの負担が少ない
- 資金使途に制限がなく柔軟に活用できる
ここでは代表的な3つのメリットを紹介します。
国保連が支払元のため手数料が比較的抑えられる
介護ファクタリングの手数料相場は0.25〜1.0%程度と、他業種のファクタリングと比べて低めに設定されています。一般的なファクタリングの手数料相場は2〜18%程度とされているため、その差は明らかです。 これは、売掛金の回収先が国保連などの公的機関のため、回収できないリスクが低い点が理由です。
担保・保証人が不要で手続きの負担が少ない
国保連からの確実な入金が見込めるため、手数料が安いだけでなく、担保や保証人も不要です。銀行融資のように不動産などの担保を用意したり、代表者の連帯保証を求められたりしないため、資産の少ない開業直後の事業所でも申し込みやすい仕組みになっています。 手続きの負担が少なく、書類が揃えばスムーズに資金調達を進められる点も安心材料の一つです。
資金使途に制限がなく柔軟に活用できる
銀行の融資や補助金を受け取る場合とは異なり、受け取った資金の使い道に制限がありません。給与や消耗品の購入だけでなく、事業所の修繕費や新たな設備投資、税金や社会保険料の支払いなどにも柔軟に充てられます。
使途を限定されないことで、経営状況に応じて優先度の高い支出に資金を回せる、自由度の高い資金として活用できる点が魅力です。
介護ファクタリングのデメリット・注意点
メリットが多い一方で、事前に知っておくべきデメリットや注意点もあります。
- 介護報酬が一括で受け取れない
- 利用しすぎによる資金繰り悪化のリスク ここでは、代表的な2つを紹介します。
介護報酬が一括で受け取れない
ファクタリングサービスによっては、介護報酬を一括で受け取れないケースがあります。これは、事業者が国保連に請求した介護給付費が、審査の結果「返戻」となり全額認められるとは限らないためです。
介護報酬債権額が確定する前に入金を行う都合上、返戻が発生した際にも対応できるよう、確定前と確定後の2回に分けて入金するファクタリング会社が複数存在します。
利用しすぎによる資金繰り悪化のリスク
介護報酬ファクタリングは資金繰り改善に有効ですが、長期利用するとかえって悪化する場合もあります。受け取れる金額は手数料を差し引いた額のため、満額は得られません。 また、一度停止すると国保連からの入金まで3〜4ヶ月の空白期間が生じ、その間に改善できなければ再び利用せざるを得なくなることもあります。利用期間を決めて計画的に活用しましょう。
【診断表】あなたの事業所は介護ファクタリング向き?
介護ファクタリングは、事業所の状況によって向き・不向きがあります。以下の診断表を参考に、自社にとって有効な選択肢かどうかを確認してみましょう。
| 利用がおすすめの事業所 | 慎重に検討すべき事業所 |
|---|---|
|
|
事業所がどの状況にあるかを確認し、適切に判断してください。
介護ファクタリング会社を選ぶポイント
いざ利用するとなった際、どのような基準で会社を選べばよいのでしょうか。
- 手数料の水準が低い
- 買取金額の上限・下限
- 介護業界での取扱実績・専門性
ここでは3つのポイントを紹介します。
手数料の水準
ファクタリング会社を選ぶ際には、手数料の水準が低いほうが望ましいといえます。介護報酬ファクタリングの手数料相場は0.25〜1.0%程度が目安です。相場よりも高い場合は、慎重に検討すべきです。 加えて、手数料の水準だけでなく、追加費用がかからないか、透明性のある料金形態であるかどうかも必ず確認しましょう。
買取金額の上限・下限
ファクタリング会社ごとに、買い取る債権額に上限・下限が設定されていることがあります。たとえば、買取可能額が10万〜1,000万円の会社では、少額すぎる債権は売却できず、高額な債権は上限超過分の買い取りを断られる場合があります。
開業直後は債権額自体が小さくなりやすいため、下限額が低い、または下限を設けていない会社を選びましょう。
介護業界での取扱実績・専門性
残念ながら悪徳業者も存在するため、介護業界での取扱実績がある安心できるファクタリング会社を選ぶことが重要です。手数料が相場以上に高い、契約書が交付されないといった場合は、契約を見送る判断も大切です。
介護ファクタリングに関してよくある質問
ここでは、介護ファクタリングに関してよくある質問をまとめました。
- 介護ファクタリングは違法ではない?
- 個人事業主でも使える?
それぞれ見ていきましょう。
介護ファクタリングは違法ではない?
介護ファクタリングそのものは違法ではありません。ただし、なかには高金利の貸し付けを実質的に行う悪徳業者も存在するため、それらと混同されて違法だと勘違いされることがあります。会社選びは慎重に行いましょう。
個人事業主でも使える?
個人事業主でも介護ファクタリングを利用できます。ただし、法人の場合と必要書類が異なるケースがあるため、申し込みの際にファクタリング会社へ確認しておくと安心です。
介護ファクタリングを活用して円滑な事業所運営につなげましょう
介護ファクタリングは、介護報酬の入金までのタイムラグによる資金繰りの課題を解決できる有効な資金調達方法です。融資とは異なり負債にならず、担保や保証人も不要で、スピーディーに資金化できる点が大きな魅力といえます。
一方、手数料や利用条件は会社によって異なるため、複数社を比較しながら、自社の状況に合った信頼できる会社を選ぶことが大切です。本記事で紹介した仕組みやメリット・デメリット、選び方のポイントを参考に、無理のない範囲で介護ファクタリングを活用し、円滑な事業所運営につなげてください。
※掲載内容はすべて記事公開時点のものです。