デイサービスを運営するうえで、売上だけでなく「いつ・いくら入金され、どのタイミングで支払いが発生するのか」を把握することが欠かせません。収益が出ていても、手元に十分な現金がなければ、給与や家賃などの支払いが難しくなる可能性があります。
特に、介護報酬の入金サイクルや利用者数の変動など、デイサービスならではの事情を踏まえた資金管理が必要です。
本記事では、デイサービスの資金繰りが悪化する原因から、現状の把握方法、改善策、資金調達の選択肢まで解説します。安定した事業運営を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
デイサービスの資金繰りが悪化する5つの原因
デイサービスの資金繰りを改善するには、まず悪化する原因を把握することが重要です。介護報酬の入金時期や利用者数の変動、人件費など、デイサービス特有の事情を理解し、自事業所に当てはまる原因を確認しましょう。
- 介護報酬の入金までに時間がかかる
- 利用者数や稼働率の低下・キャンセルで収入が減少する
- 人件費などの固定費が大きな負担になる
- 送迎車両や設備にまとまった支出が発生する
- 請求ミスや返戻によって介護報酬の入金が遅れる
介護報酬の入金までに時間がかかる
デイサービスの主な収入源となる介護報酬は、サービスを提供した後すぐに入金されるわけではありません。国保連へ介護報酬を請求してから実際に支払われるまでには時間がかかるため、サービス提供から入金まで約2か月のタイムラグが生じます。
一方で、職員の給与や家賃、水道光熱費などは毎月支払う必要があります。そのため、介護報酬が入金されるまでの支払いに対応できるよう、十分な手元資金を確保しておくことが重要です。
売上が計上されていても現金が不足する可能性があり、このような入金と支払いのタイミングのズレが、デイサービスの資金繰りを難しくする原因となります。
利用者数や稼働率の低下・キャンセルで収入が減少する
デイサービスは、利用者数や利用回数が売上に大きく影響します。定員に対して利用者が少なく稼働率の低い状態が続くと、想定していた収入を確保できず、資金繰りが悪化しやすくなります。
また、利用者の入院や施設への入所、ほかの事業所への移行などによって利用が終了するケースも少なくありません。さらに、体調不良や家庭の事情によるキャンセルも、予定していた収入が得られない原因のひとつです。
特に感染症の流行などで複数のキャンセルが重なると、一時的に売上が大きく落ち込む可能性があります。一方で、職員の人件費や家賃などの固定費は継続して発生するため、利用者数や稼働率の変動を考慮した資金計画を立てることが重要です。
人件費などの固定費が大きな負担になる
デイサービスでは、基準を満たすために必要な人員を配置して運営する必要があります。そのため、利用者数や売上が減少しても、人件費を簡単に削減することはできません。
利用者が少ない日や稼働率が低い時期でも一定の人件費が発生するほか、家賃や水道光熱費、システム利用料などの固定的な支出も必要です。
収入が減少しても毎月の支出が大きく変わらない状態が続けば、手元資金が徐々に減少し、資金繰りの悪化につながる可能性があります。利用状況と毎月の固定費を把握し、収入とのバランスを確認しながら資金を管理することが重要です。
参考:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|厚生労働省
送迎車両や設備にまとまった支出が発生する
デイサービスでは利用者の送迎に車両を使用することが多く、購入・リース費用のほか、車検や修理、買い替えなどの支出も発生します。
また、浴室や空調、介護設備なども、故障や老朽化によって修繕・更新が必要です。車両や設備の修繕・更新には、まとまった費用がかかる場合もあります。
急な故障などで想定外の支出が発生すると、手元資金が大きく減り、資金繰りを圧迫する可能性があります。更新時期や必要な費用をあらかじめ把握し、計画的に資金を確保しておきましょう。
請求ミスや返戻によって介護報酬の入金が遅れる
介護報酬の請求内容に誤りや不備があると、国保連から返戻され、内容を修正したうえで再請求が必要になる場合があります。返戻が発生すると予定していた時期に介護報酬を受け取れず、入金が遅れる原因となります。
介護報酬の入金を職員の給与や家賃などの支払いに充てる予定だった場合、入金が遅れることで一時的な資金不足に陥る可能性もあるでしょう。
安定した資金繰りを維持するためには、請求前に入力内容や算定要件などを確認し、請求ミスを防ぐ体制を整えることが重要です。返戻が発生した場合も内容を速やかに確認し、再請求を行いましょう。
デイサービスの資金繰り状況を把握する方法
デイサービスの資金繰りを改善するには、現在の資金状況を正確に把握することが重要です。資金繰り表や現預金残高、利用者数・稼働率などを定期的に確認し、資金不足の兆候を早めに把握して対策につなげましょう。
- 資金繰り表を作成してお金の流れを可視化する
- 現預金残高と毎月の固定費を定期的に確認する
- 利用者数や稼働率の推移を確認する
資金繰り表を作成してお金の流れを可視化する
資金繰り表を作成し、月ごとの入金額や支出額、現預金残高を整理することで、デイサービスのお金の流れを可視化できます。
介護報酬の入金予定だけでなく、人件費や家賃、税金、借入金の返済など、今後発生する支払いも反映することが重要です。
数か月先までの資金繰り表を作成しておけば、いつ・どの程度の資金が不足する可能性があるのかを把握しやすくなります。将来的な資金不足を早めに把握できれば、支出の見直しや金融機関への相談、資金調達などの対策を余裕を持って進められるでしょう。
現預金残高と毎月の固定費を定期的に確認する
銀行口座などの現預金残高を定期的に確認し、現在どの程度の手元資金を確保できているのか把握することが重要です。
あわせて、人件費や家賃、リース料、借入金の返済など、毎月継続して発生する固定費も整理しておきましょう。
現在の現預金で固定費を何か月程度支払えるのかを確認しておけば、資金不足の兆候にも早めに気づきやすくなります。手元資金に余裕がない場合は、支出の見直しや資金調達などの対策を早めに検討できます。
利用者数や稼働率の推移を確認する
将来の収入を予測するためには、利用者数や稼働率の推移を継続的に確認することが重要です。月別・曜日別などで利用状況を比較すると、利用者が減少している時期や空きが多い曜日を把握しやすくなります。
利用者数や稼働率の低下が続けば、今後の介護報酬も減少する可能性があります。定期的に推移を確認し、想定していた利用状況との差が大きい場合は、売上や支出の予測を修正するなど、実態に合わせて資金計画を見直しましょう。
デイサービスの資金繰りを改善する5つの対策
デイサービスの資金繰りを改善するには、売上の確保と支出の見直しを並行して進めることが重要です。資金不足が深刻化する前に自事業所の課題に合った対策を行い、安定した資金繰りにつなげましょう。
- 利用者数や稼働率を高めて売上を確保する
- 介護報酬の加算を適切に取得する
- 人件費や固定費などの支出を見直す
- 請求ミスや未収金の発生を防ぐ
- 設備投資や大きな支出は計画的に行う
利用者数や稼働率を高めて売上を確保する
資金繰りを改善するには支出を減らすだけでなく、利用者数や稼働率を高めて安定した売上を確保することも重要です。
まずは定員に対する利用状況や曜日ごとの空き状況を確認し、稼働率が低い原因を分析しましょう。空きが目立つ場合は、ケアマネジャーへの情報提供を行い、事業所の特徴や受け入れ状況を知ってもらうことも有効です。
また、利用者や家族のニーズを把握し、サービス内容や対応を見直すことも大切です。新規利用者の獲得と既存利用者の継続利用につなげ、安定した収入を確保しましょう。
介護報酬の加算を適切に取得する
利用者数を増やすだけでなく、提供しているサービスや人員体制に応じた加算を適切に取得することも、収益の改善につながります。
まずは、自事業所で取得できる加算を確認し、それぞれの算定要件を満たしているか定期的に見直しましょう。要件を満たしているにもかかわらず算定していない場合、本来受け取れる介護報酬を取りこぼすことになります。
加算によって人員配置や設備、記録などの要件が異なるため、厚生労働省の最新情報を確認することが大切です。要件を正しく把握したうえで、適切な届出や算定を行いましょう。
出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
人件費や固定費などの支出を見直す
毎月の支出を洗い出し、資金繰りを圧迫している費用や削減できる費用がないか見直すことも重要です。
利用者数や稼働率に対して職員配置が適切か確認するほか、通信費や保険料、システム利用料などの契約内容も見直しましょう。金額の大きい支出から優先して確認すると、より高い改善効果が期待できます。
ただし、コスト削減を優先するあまり、必要な人員配置基準を満たせなくなったり、サービスの質が低下したりしては本末転倒です。事業運営に必要な費用とのバランスを考えながら、無駄な支出を削減しましょう。
請求ミスや未収金の発生を防ぐ
国保連への請求前に内容を確認し、入力漏れや算定誤りなどによる返戻をできるだけ防ぐことが重要です。返戻が発生した場合は内容を速やかに確認して再請求し、入金の遅れを長期化させないようにしましょう。
また、利用者負担分についても未収金が発生していないか定期的に確認する必要があります。口座振替などを活用して回収漏れを防ぎ、本来受け取れる収入を確実に確保することで、安定した資金繰りにつなげましょう。
設備投資や大きな支出は計画的に行う
送迎車両や介護設備などの購入・更新には、まとまった資金が必要です。急な支出によって資金繰りが悪化しないよう、設備投資は計画的に行いましょう。
車両や設備の状態を定期的に確認し、更新が必要になる時期や費用をあらかじめ見積もっておくことが大切です。
また、設備投資の予定は資金繰り表にも反映し、必要な資金を事前に確保しておきましょう。購入だけでなくリースなども比較し、手元資金への負担を抑えられる方法を検討することが重要です。
デイサービスで利用できる資金調達方法
資金繰りの改善だけでは手元資金を確保できない場合、外部からの資金調達も検討する必要があります。融資やファクタリング、補助金・助成金の特徴を理解し、自事業所の状況に合った方法を選びましょう。
- 日本政策金融公庫や金融機関から融資を受ける
- 介護報酬ファクタリングを利用する
- 補助金・助成金を活用する
日本政策金融公庫や金融機関から融資を受ける
運転資金や設備資金が不足する場合は、日本政策金融公庫や銀行などから融資を受ける方法があります。
主な選択肢は、日本政策金融公庫の融資、銀行・信用金庫などの民間金融機関からの融資、自治体の制度融資などです。必要な資金額や用途、返済期間などを整理し、自事業所の状況に合った調達先を検討しましょう。
融資を受けるには審査があり、申し込みから入金まで一定の期間がかかる場合もあります。手元資金が不足してからでは選択肢が限られる可能性もあるため、資金繰り表などで今後の状況を確認し、余裕を持って相談することが重要です。
介護報酬ファクタリングを利用する
介護報酬ファクタリングとは、入金前の介護報酬債権をファクタリング会社へ譲渡し、早期に資金化する方法です。
通常より早く現金を確保できるため、介護報酬が入金されるまでの給与や家賃など、運転資金の支払いに充てられます。また、融資とは異なり借入ではないため、原則として返済する必要はありません。
一方で、ファクタリングの利用には手数料がかかり、その分受け取れる金額は少なくなります。継続的な利用が収益を圧迫する可能性もあるため、必要な資金額や利用期間、手数料などを確認したうえで利用を判断しましょう。
補助金・助成金を活用する
国や自治体などが実施する補助金・助成金のうち、デイサービスが対象となる制度があれば積極的に活用しましょう。原則として返済する必要がないため、設備投資や人材確保などにかかる費用の負担を抑えられます。
ただし、制度ごとに対象者や対象経費、申請期間などの条件が設けられています。また、申請から支給まで時間がかかったり、費用を支払った後に支給されたりする場合もあるため、緊急の運転資金を確保する方法とは分けて考えることが重要です。
デイサービスの資金繰りを安定させる3つのポイント
デイサービスの資金繰りを安定させるには、資金不足が起きてから対応するのではなく、日頃から備えておくことが大切です。運転資金の確保や収支計画の見直しを行い、資金不足を未然に防ぎましょう。
- 数か月分の運転資金を確保しておく
- 収支計画を定期的に見直す
- 資金不足になる前に早めに対策する
数か月分の運転資金を確保しておく
介護報酬はサービス提供から入金まで時間がかかるため、その間の支払いに対応できる数か月分の運転資金を確保しておくことが重要です。
まずは、人件費や家賃、水道光熱費など、毎月発生する支出を把握し、事業を継続するために必要な資金額を見積もりましょう。特に開業時は、物件取得費や設備費などの初期費用と、開業後に必要となる運転資金を分けて考える必要があります。
また、利用者数の減少や設備の故障などによって、想定外の支出が発生する場合もあります。急な資金不足に備えて、余裕を持った資金計画を立てておきましょう。
収支計画を定期的に見直す
開業時や年度初めに作成した収支計画はそのままにせず、実際の収入・支出と定期的に比較して見直しましょう。
利用者数や稼働率が想定を下回っていないか、人件費や水道光熱費、燃料費などが計画を上回っていないか確認する必要があります。
計画と実績に大きなズレが生じている場合は、その原因を分析することが大切です。利用者数の増加に向けた取り組みや支出の削減など、状況に応じて収支計画を修正し、早めの改善につなげてください。
資金不足になる前に早めに対策する
手元資金が少なくなってから対応すると、利用できる資金調達手段や経営上の選択肢が限られる可能性があります。資金不足が深刻になる前に、早めに対策を始めましょう。
資金繰り表や現預金残高を定期的に確認し、数か月先に資金が不足すると予想される場合は、支出の見直しや資金調達を検討します。
自事業所だけでの対応が難しい場合は、金融機関や税理士などの専門家に相談するのも有効です。早めに行動し、資金ショートを防ぎましょう。
デイサービスの資金繰りを見直して安定した経営につなげよう
デイサービスでは介護報酬の入金までに時間がかかる一方、人件費や家賃などの支払いは毎月発生します。利用者数や稼働率の低下、請求ミスによる入金の遅れなども、資金繰りが悪化する原因です。
安定した経営を続けるには、資金繰り表を作成してお金の流れを把握し、売上の確保や支出の見直しに取り組むことが大切です。資金不足が予想される場合は、融資やファクタリングなどの資金調達も早めに検討しましょう。
また、数か月分の運転資金を確保し、収支計画を定期的に見直すことも欠かせません。日頃から資金状況を確認し、余裕を持った資金管理を心がけましょう。
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